ドイツには母子家庭がとても多い。知人のドイツ人女性は、かわいい子供を2人もうけたが、子供の肌の色が違う見事なパッチワークである。2人の子供を一人で育て上げるその気力、努力には(嫌味ではなく)本当に脱帽する。かなり苦労をしているに違いないが、一切、愚痴を言わないばかりか、陽気そのもの。ドイツ人にしては素晴らしい性格の持ち主だ。ドイツでは母子家庭が当たり前なので、社会的に偏見に遭うことがないのも、彼女を支えているのかもしれない。
ドイツで一人で子供を育てるという事は、社会保障のお世話になる事を意味する。幸いドイツでは社会保障システムが整っているので、決して楽な生活ではないが、十分に生活していくことができる。ただし、子供の父親が、「俺はロックスターになる。」と言い出して職場を放棄、ギターの練習を始めると子供の養育費を払えなくなる(実例)。そのようなケースでは、母親が子供ばかりか役に立たない父親も養っていかなければならないが、遅かれ早かれ、離婚になる。しかし父親は子供の養育費を払えないので、かなりしんどい生活になる。言うだけ無駄かもしれないが、「父親探し」は慎重に。ドイツ人と結婚して離婚、生活保護で生活している日本人女性の数は少なくない。
ドイツの法律では、養育費は(子供と一緒に生活していない片方の親にとって)子供が3歳になるまでしか払う義務がない。この為、子供が幼稚園に行きだすと、早く職場に復帰する必要がある。この機会を逃してしまい、5~6年も職場から離れてしまうと、以前習ったスキルを忘れてしまっているか、新しいシステムが導入されており、かっての職業経験を生かすことができなくなり、採用する側でも人気がなくなる。このような背景があって、母子家庭の母親は一生、生活保護のお世話になる危険がある。この傾向は特に外国人、つまり日本人女性の場合は顕著だ。
こうした欠点を回避する為に、ドイツではフランスを手本に幼稚園の数を増やす努力が行われているが、目標にはまだまだ遠く、子供を預ける場所がない為に職場復帰ができないケースが後を絶たない。さらにドイツでは小学校は朝の8時に始まり(学校により差があります)、低学年の場合は14時には終わってしまう。5~6歳の子供を一人で放っておくことはできないので、母親は13時には仕事を切り上げて帰途につかなければならない。つまり1週間で20時間しか働けないので、往々にして母親は400ユーロの収入しかない、ミニジョブと呼ばれるアルバイトしかできない。これでは一生、社会保障を請けながら、内職の仕事で食いつないでいくことになる。
「これではいかん!」と一声をあげたのは、労働大臣のvon der Leyen女史だ。女性の地位を上げるべく、又、母子家庭の子供が学校の遠足や課外活動に参加できるように、「クーポン券を導入する。」言い出だした。女史によれば、「生活保護を受けている家庭の子供が、教育上、差別を受けることがあってはならない。」というのだが、野党はこれを批判した。野党は、「学校を全日制にすれば、母親には職場復帰が可能になり、問題はすべて解決する。」という。この言い分には一理あった。さらに、「クーポン券などという官僚的なシステムは、全く機能しない。」と警告した。こうしたもっともな反論にも関わらず、労働大臣は自信の案に陶酔してしまっており、非難を聞く耳を持たず、クーポン券制度を国会で通して導入してしまった。2011年4月に始まったこの制度だが、利用率はたったの2%という見事なフロップとなった。
子供を育てることに忙しい母親が、国会で決議される内容を把握している余裕などあるわけもなく、このクーポン券の存在は、母親に知られる事がなかった。知っていても、役所まで申請書を取りに行き、手引書を読みながらこれに記入、また役所に届けるだけの気力と暇がある母親が何人居るだろう。労働大臣は面子を救うために、「宣伝がされなかったのが原因だ。」と言い、数億ユーロも払って高価なキャンペーンを開始する事にした。野党は、「そんな金があれば、全日制の学校につぎ込むべきだ。」と批判したが、大臣は自身のアイデアの正当性を疑わなかった。ところがである。クーポン券がある事がやっと知れ渡ったのに、、利用率は10%を超えることがなかった。その原因は、地方自治体にある。ただでも忙しいのに、労働大臣の決定で、余計な仕事が増えてしまった。クーポン券の申請用紙が届くと、データをコンピューターに打ち込んで、役所内で許可を取らなければならないが、何処に、どうやってデータを打ち込むのか、そしてどのようにお金が支払われるのか、その仕組みが伝わっていなかった。こうして申請書は役所で山済みとなり、子供の遠足費用を申請したものの許可が下りないので、遠足にも参加できないという以前と変わらない状況のまま。
「それ見たことか。」と、野党に格好の攻撃目標を提供した労働大臣だが、そこは大臣の大臣たる所以、「アイデアは悪くない。問題はこれを実行に移す地方自治体にある。」と責任を回避した。税金を浪費して、母子家庭にとって大きな恵みにはならなかったクーポン券だが、それでもまだマシだった。労働大臣は元来、チップを埋め込んだカードを母子家庭に支給する、壮大な計画を持っていた。子供がこのカードを学校や塾、サッカークラブなどに差し出せば、現場でチップを読み込んで、催し物に参加できるという素晴らしい構図だった。欠点はひとつ。塾、学校、サッカークラブ、乗馬クラブ、その他あるゆる機関にこのチップの読み取り機が設置されていないと、チップを読み取れない。チップで読み取ったデータを処理するプログラムは言うに及ばず、そんなに大量の読み取り機を設置するだけで、まず最初に数億ユーロの出費が必要になり、それだけで省の予算がなくなってしまう。そこでクーポン券に落ち着いた経緯がある。頭脳聡明な大臣だが、所詮は大衆とは縁のない上流階級。現場の実情を知らないが為に、今回ばかりは大ヘマをこいてしまった。
母子家庭をクーポン券で救う案は、

見事なフロップで終わった。

ドイツで一人で子供を育てるという事は、社会保障のお世話になる事を意味する。幸いドイツでは社会保障システムが整っているので、決して楽な生活ではないが、十分に生活していくことができる。ただし、子供の父親が、「俺はロックスターになる。」と言い出して職場を放棄、ギターの練習を始めると子供の養育費を払えなくなる(実例)。そのようなケースでは、母親が子供ばかりか役に立たない父親も養っていかなければならないが、遅かれ早かれ、離婚になる。しかし父親は子供の養育費を払えないので、かなりしんどい生活になる。言うだけ無駄かもしれないが、「父親探し」は慎重に。ドイツ人と結婚して離婚、生活保護で生活している日本人女性の数は少なくない。
ドイツの法律では、養育費は(子供と一緒に生活していない片方の親にとって)子供が3歳になるまでしか払う義務がない。この為、子供が幼稚園に行きだすと、早く職場に復帰する必要がある。この機会を逃してしまい、5~6年も職場から離れてしまうと、以前習ったスキルを忘れてしまっているか、新しいシステムが導入されており、かっての職業経験を生かすことができなくなり、採用する側でも人気がなくなる。このような背景があって、母子家庭の母親は一生、生活保護のお世話になる危険がある。この傾向は特に外国人、つまり日本人女性の場合は顕著だ。
こうした欠点を回避する為に、ドイツではフランスを手本に幼稚園の数を増やす努力が行われているが、目標にはまだまだ遠く、子供を預ける場所がない為に職場復帰ができないケースが後を絶たない。さらにドイツでは小学校は朝の8時に始まり(学校により差があります)、低学年の場合は14時には終わってしまう。5~6歳の子供を一人で放っておくことはできないので、母親は13時には仕事を切り上げて帰途につかなければならない。つまり1週間で20時間しか働けないので、往々にして母親は400ユーロの収入しかない、ミニジョブと呼ばれるアルバイトしかできない。これでは一生、社会保障を請けながら、内職の仕事で食いつないでいくことになる。
「これではいかん!」と一声をあげたのは、労働大臣のvon der Leyen女史だ。女性の地位を上げるべく、又、母子家庭の子供が学校の遠足や課外活動に参加できるように、「クーポン券を導入する。」言い出だした。女史によれば、「生活保護を受けている家庭の子供が、教育上、差別を受けることがあってはならない。」というのだが、野党はこれを批判した。野党は、「学校を全日制にすれば、母親には職場復帰が可能になり、問題はすべて解決する。」という。この言い分には一理あった。さらに、「クーポン券などという官僚的なシステムは、全く機能しない。」と警告した。こうしたもっともな反論にも関わらず、労働大臣は自信の案に陶酔してしまっており、非難を聞く耳を持たず、クーポン券制度を国会で通して導入してしまった。2011年4月に始まったこの制度だが、利用率はたったの2%という見事なフロップとなった。
子供を育てることに忙しい母親が、国会で決議される内容を把握している余裕などあるわけもなく、このクーポン券の存在は、母親に知られる事がなかった。知っていても、役所まで申請書を取りに行き、手引書を読みながらこれに記入、また役所に届けるだけの気力と暇がある母親が何人居るだろう。労働大臣は面子を救うために、「宣伝がされなかったのが原因だ。」と言い、数億ユーロも払って高価なキャンペーンを開始する事にした。野党は、「そんな金があれば、全日制の学校につぎ込むべきだ。」と批判したが、大臣は自身のアイデアの正当性を疑わなかった。ところがである。クーポン券がある事がやっと知れ渡ったのに、、利用率は10%を超えることがなかった。その原因は、地方自治体にある。ただでも忙しいのに、労働大臣の決定で、余計な仕事が増えてしまった。クーポン券の申請用紙が届くと、データをコンピューターに打ち込んで、役所内で許可を取らなければならないが、何処に、どうやってデータを打ち込むのか、そしてどのようにお金が支払われるのか、その仕組みが伝わっていなかった。こうして申請書は役所で山済みとなり、子供の遠足費用を申請したものの許可が下りないので、遠足にも参加できないという以前と変わらない状況のまま。
「それ見たことか。」と、野党に格好の攻撃目標を提供した労働大臣だが、そこは大臣の大臣たる所以、「アイデアは悪くない。問題はこれを実行に移す地方自治体にある。」と責任を回避した。税金を浪費して、母子家庭にとって大きな恵みにはならなかったクーポン券だが、それでもまだマシだった。労働大臣は元来、チップを埋め込んだカードを母子家庭に支給する、壮大な計画を持っていた。子供がこのカードを学校や塾、サッカークラブなどに差し出せば、現場でチップを読み込んで、催し物に参加できるという素晴らしい構図だった。欠点はひとつ。塾、学校、サッカークラブ、乗馬クラブ、その他あるゆる機関にこのチップの読み取り機が設置されていないと、チップを読み取れない。チップで読み取ったデータを処理するプログラムは言うに及ばず、そんなに大量の読み取り機を設置するだけで、まず最初に数億ユーロの出費が必要になり、それだけで省の予算がなくなってしまう。そこでクーポン券に落ち着いた経緯がある。頭脳聡明な大臣だが、所詮は大衆とは縁のない上流階級。現場の実情を知らないが為に、今回ばかりは大ヘマをこいてしまった。
母子家庭をクーポン券で救う案は、

見事なフロップで終わった。

スポンサーサイト