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ユーロ危機 2.0 (16.02.2012)

2012年になってからユーロ危機のニュースがまばらになったので、「ギリシャはもう峠を越えたんじゃないか。」と誤解しそうだが、状況は半年前よりもさらに悪化している。数字を挙げてその惨状を見てみよう。失業率は2011年の16.3%から2012年は20.9.%に上昇、25歳までの若者の失業率は50%を超えているが、この数字はまだまだ右肩上がり。この数字を証明するように、2011年の国内総生産高、俗に言うBIPは6,8%も縮小した地震、津波、核災害の三大災害に加えて、タイの大洪水でボロボロになった日本経済の経済成長率がマイナス0.9%だったから、ギリシャの惨状がよくわかると思う。

では何故、2012年になってから株価が上昇を続け、ユーロも安定、ユーロ危機というニュースを聞かなくなったのか。それには幾つか要因がある。そのきっかけを作ったのは欧州中央銀行だ。「中央銀行が負債国家の国債を大量に買い占めるべきだ。」という銀行業界からの強い要求があったが、中央銀行は「これは中央銀行の役目ではないと。」大幅介入を拒否、その代わりに銀行に利子1%で 大型融資を行うことを発表した。まるで倒産寸前の銀行に殺到する預金者のように、欧州の銀行は中央銀行に融資を申請、1ヶ月のうちに5千億ユーロもお金を借り付けた。中央銀行はこの金で銀行が国債を買ってくれることを願ったが、お金を駆りつけた銀行は、その大部分を欧州銀行に1%の金利で預けるこにより、表面上の銀行の自己資産率を改善さてしまった。結果、「意味のない金融政策」と、当初の評価はあまり高くなかった。

ところがである。2012年になって株式市場が安定すると、国債市場も安定し始めた。先回は5.9%の利子を払ったスペイン国債が、ほぼ半額の2.7%で完売してしまった。イタリアの国債も、同様に利率がほぼ半分に落ちてきた。これはイタリア新政府の真剣な財政赤字への取り組みが、効果を示したことも理由のひとつではあるが、「1%の利子でお金を借りて、スペインやイタリアの国債を買えばボロ儲けが出来る。」と銀行が考え始めたことが主因だ。こうして銀行は、中央銀行から借りた金で負債国家の国債を買い始めた。買い手が増えたため、負債国家の国債の利率がさらに下がると、市場に安心感が回復して、さらに株価を押し上げる結果となっている。わずか数ヶ月前までは考えらなかった事態である。不思議なのは欧州中央銀行が直接、負債国家の国債を直接買わないで、銀行に融資を行い、その銀行に国債を買ってもらうという間接的な方法を取った事。去年、欧州政府と銀行の会合で自発的にギリシャの国債を50%放棄した銀行へのボランテイアだったのかもしれない。

しかし安心するのはまだ早い。上述の通り、ギリシャは底なしの樽と化しており、ギリシャがまだ破産していないのは、樽が空になる前に欧州諸国がお金を注ぎ込んでいるからに過ぎない。この樽が3月に空になるので、今、欧州では第二回目のギリシャへの財政支援を検討中だ。ところがである。第一回目の財政支援と引き換えに約束された 国営企業の民営化、公務員の数の減少など、遅々として進んでいない。早い話、賢いギリシャ人は、「何でも言われたとおりするから。」と口約束だけして、欧州政府から支援金だけ受けた形となっている。これに懲りた欧州政府は、公務員の15万人カット、及びこれまで年間2回支給されていた公務員のボーナスカットなど、さらに厳しい条件を第二回目の財政援助の条件とした。

賢いギリシャ人は、この要求をほぼ飲み込んだ。唯一の変更点は、公務員のボーナスカットの代わりに、市民の最低賃金を751ユーロから、586ユーロに下げることだった。この政府の決定を知らされた市民の反応は、長く待つ必要がなかった。職がない若者はこれを鬱憤を晴らすいい機会と見て、街中で放火と略奪の限りを尽くした。ギリシャでは先回の財政支援の引き換えにさまざま税金が上がっており、消費税は23%に値上げされいる。その結果、家賃を除く物価はドイツとほぼ同じだ。その国でたった586ユーロで生活できるわけがない。問題を解決するには採算性の悪い 国営企業の民営化、そして必要もないのに作り上げてしまった巨大な官僚システムの縮小である。ところがギリシャでは実権を握っている官僚が、幾ら政治家が取り決めをしても、自分の座っている木を切り倒すような政策には一向に真面目に取り組まないので、問題は改善しないままになっている。

ところが今度は欧州政府も過去の失敗からしっかり学んでいるようで、「言葉ではなく、実績で示せ。」と、ギリシャの国会での決議だけで満足しないで、改革の実際的な取り組み方まで要求した。これが原因で、本来なら今週中に第二回目の財政支援が決定される筈であったが、欧州政府はギリシャ政府から改革取り組みの証拠が届くまで、決定を先延ばしする事にした。要するにじらし作戦であるが、欧州政府は賢いギリシャ人には太刀打ちできないだろう。ギリシャ人は、欧州政府が財政支援を行わなければ、ギリシャだけでなく、ギリシャの国債を保有している欧州各国の銀行が経営難に陥ることをよく知っている。欧州政府は自国の銀行を破綻から救うために、ギリシャへの財政支援を、遅かれ、早かれ、決定する事になるだろう。問題はその後だ。

ギリシャ経済が今年(今後)も縮小するのは、避けられない。すなわち税収入も減少するので、幾ら税率を上げても、樽は一杯にならない。間違いなく今年中に第三回目の財政支援が必要になる。しかし欧州政府が3回も騙されるとは思えない。次回はギリシャを破産させることになるだろう。銀行はすでギリシャへの負債の90%を諦める旨、ギリシャ政府と合意に達している上、今回の欧州中央銀行の大ボーナスで残りの10%の損失をカバーをできるだけの商売をしているので、年末にギリシャが破産しても銀行システムが崩壊する事はないだろう。まだギリシャ国債の紙屑化に備えて、 金融機関は保険に入っているので、紙屑になってもその損失は保険でカバーされる。欧州政府はそれまでにユーロを安定させて、ギリシャ破産により他の国がドミノ倒しにならないようにする必要がある。具体的にはポルトガル、スペイン、イタリアの財政赤字の縮小だ。もし2012年に景気が上向きになれば、現時点ではそのような兆候があるが、この冬までにギリシャ破綻の波をふせぐ防波堤が出来ている事だろう。そうでない場合、ユーロは終焉する事になる。
          

ギリシャのユーロ貨幣。もうじきなくなるかも。
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まとめtyaiました【ユーロ危機 2.0 (16.02.2012)】

2012年になってからユーロ危機のニュースがまばらになったので、「ギリシャはもう峠を越えたんじゃないか。」と誤解しそうだが、状況は半年前よりもさらに悪化している。数字を挙げ