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地方自治体と電力会社は運命共同体 

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策なし、お手上げ。

地方自治体と電力会社は運命共同体



ドイツでも地方自治体は、地元に大量の雇用を提供してくれる電力会社の株を保有している。

勿論、自治体は電力会社が毎年払う配当金がお目当てで、電力会社の配当金は市の予算に毎年、多額の貢献をしている。

景気が悪くなると業績が悪化して配当金が削られる業種と異なり、電気は景気が悪くなっても消費されるので、電力会社の業績は安定、安定した配当金が得られる。

このような背景もあって地方自治体と電力会社は一種の運命共同体 /"Symbiose"を形成していた。

ちょうど花粉の交配をしてくれる蜂がいなくなれば、果実農家がなくなるように、両者は互いになければなならない関係にあった。

だから原子力発電所の近辺で癌になる住民の数が増えても、

「直接の関係は認められない。」

という電力会社の立場を尊重した。電力会社が電気代を値上げしても、これを黙認した。会社の儲けが増大すれば、配当金も上昇するからだ。

電力会社はそのお礼に、「将来必要になる原子力発電所の解体費用は、毎年の儲けの中から、積み立てておきます。」と約束した。

原発に変わる金のなる木



この関係は半世紀にわたって存続してきた。

ところがまずはチェルノブイリの原子炉爆発事故で、ドイツ国内原発の廃止が決まり、電力会社は原発に変わる

「金のなる木」

を探す必要に迫られた。そこで電力会社が注目したのが、ドイツに

「履いて捨てるほどある」

品質の悪い褐色石炭を使う火力発電だ。燃焼効率が悪いので発電効率は低いが、何しろ、褐色石炭は無尽蔵にある。

そこで大型の採掘施設を設けて大量に採掘、安い費用で電気を製造する事が可能になった。ところが褐色石炭は大量に二酸化炭素を排出する。

90年代になると環境汚染、とりわけ地球の温暖化で二酸化炭素が悪玉に挙げられた。しかし地方自治体は電力会社の言う、

「クリーンな火力発電」

という言葉を鵜呑みにして、新しい石炭発電所の建設を次々に許可した。

21世紀になって誕生した新政府は、政治献金のお礼に廃止する筈だった原子力発電所の稼働年数を20年延期した。

「解体処分」になる筈だった原子力発電所は再び金のなる木に変身、電力会社はまさに最盛期を迎えた。

ルール工業地帯の心臓部、エッセンに本社を置くドイツ第二の電力会社、RWEの株価は100ユーロを突破、運命共同体である地方自治体も相好を崩した。

電力市場の自由化



2007/8年の大不況で RWE の株価は75ユーロまで下落した。

が、不況でも電気はこれまで通り消費され、配当金は安定、不景気で税収入の減った地方自治体は「ほっ」と胸をなでおろした。

ところが環境対策としてクリーンな再生エネルギーへ補助金が決定されると、これまでは巨大な電力会社に太刀打ちできなかった中規模の会社、そして個人までこの再生エネルギーに投資を始めた。

RWE を初めとする巨大な電力会社はこれまで通り一極集中型の大型発電者に固執、こっけないほど発電量の低い再生エネルギーを鼻で笑った。

しかし間に悪い事に、これまでは一向に効果のなかった電力市場の自由化が、ここに来て始めて効果を発揮し始めた。

ライプチッヒに設けられた電気市場で、大型顧客への電気代が下降を初め、1年間で半額以下にまで下がった。

これはドイツの電気市場を独占する電力会社への強烈なボデイーブローとなり、株価はボデイーブローをくらったボクサーのようにガックリ折れた。

あの金融信用危機の際、75ユーロもしていたRWE の株価は、いきなり40ユーロまで下がった。そしてこの間の悪い時期、今度は福島原発で原子炉が溶解する事故が起きた。

原発の再廃止決定



ドイツ政府が議決したばかりの原発の稼動延期を廃案にすると、RWE の株価の下落は加速され、20ユーロにまで下落した。

しかるに地方自治体への「義理」があるRWEは一株あたり2ユーロという高額の配当金を払った。わずかな額に下落した株価に不満の自治体も、とりあえず配当金が支払われる事で満足、将来について考える事を怠った。

個人投資家ならこの時点で、電力会社の将来は見えている事を悟り、株を売却していただろう。2013年には株価は30ユーロを越えるまで回復、この機会に「さようなら」をするチャンスがあった。

実際、デユッセルドルフなど、ごく一部の先見の明のある自治体は株を売価、運命共同体から脱した。しかし大多数の自治体は、

「我慢すれば厳しい冬の時期もいつかは終わる。」

と、これまで半世紀以上にわたって続いた運命共同体から抜け出す決心がつかなかった。株を売ってしまうと配当金に変わる収入源を見つける必要があるが、自治体はそのような努力を好まなかった。

じり貧からドカ貧に



そしてこれまで、

「こっけいなほど発電量が低い。」

とあざけっていた再生エネルギーの発電量が急増してきた。日本と違ってドイツでは、

「再生エネルギーを優先する。」

と決められているので、風の強い日、天気のいい日に再生エネルギーが需要を越えて発電されると、高い金を払って建設した火力発電者は業務停止を余儀なくされる。

電力会社の発電所は、「発電して何ぼ」の物で、業務停止しているだけでは、発電所の維持経費ばかりかかってしまう。お陰でRWEは2014年280億ユーロの赤字を計上した

しかしこの時点でも同社は一株あたり1ユーロの配当金を払った。同社は空前の300億ユーロの借金があることを考えれば、配当金を借金の返済に回すべきだったろうが、自治体同様にこれまでの「ぬるま湯」から抜け出す事ができなかった。

EON 原発の子会社化問題



さらには、ここで紹介した通り、

「原発の解体費用が足らない。」

と報道された。するとライバルのEON社は、会社を二分、原発を子会社に移管する妙案を思いついた。

いざ、原発の解体が始まり、お金が足らなくなり会社が倒産しても、あとは福島原発のように国が税金を使って面倒を見てくれるという、実に頭のいい妙案だった。

しかしドイツ政府はこの案が実行される前に、

「原発を子会社に移管してはならない。」

と法案を成立させて、EONの子会社案を粉砕した。

EON 再生エネルギー攻勢



結果、同社は原発、火力発電を本社に留め、再生エネルギーの発電は子会社に移管することにした。

この新会社をクリーンなエネルギー会社として宣伝、乗り遅れた波に飛び乗り、これで一儲けしようという狙いだ。

このEONの決定後、注目はRWEに集まった。遅かれ早かれ、同社もこれに追随するとみられたが、1年に渡って何も聞かれなった。ライバルEONの奇抜なアイデアに圧巻されて、大急ぎで同じようなプランの作成に入ったことが推測された。

RWE 株価最安値更新!



2015年になると電力会社をとりまく環境はますます悪化した。

原子力発電と火力発電に頼る日本と違って、早めに再生エネルギーへの転換を始めたドイツでは、2015年、なんと発電量の33%を再生エネルギーから得た

すなわち電力会社が保有している巨大な発電所は、待機するだけで、会社のお荷物に成り下がった。まったく儲からない発電事業でRWEは2015年、またしても赤字に転落、株価は記録的な8ユーロという最安値を更新した。

かって100ユーロもした株価が、たったの8ユーロ。そして将来も暗い。今後、再生エネルギーの成長が続く事はあっても、火力発電が必要とされる事はますます稀になる。

結果、同社は電子力発電所ばかりか、火力発電まで早期に廃止、解体を迫られることになりそうだ。しかし巨額の借金はあっても、その財源がない。

ここにきて同社はライバルのEONの戦術をコピー、同社を二分すると発表した。そして再生エネルギーを担当する新しい子会社の社長には、RWE の社長であるTerium氏が、就任すると決定した。

通常、そのような会社の将来を左右する戦略の変更は、「切っても切れない関係」にあるパートナーの地方自治体の了解を得てから発表するものだが、地方自治体は相談を受けず、決定だけが通告された。

ついに配当金ゼロ!



地方自治体は、RWE がこれまでの伝統を破り、なりふりかまわぬ行動に出たことを不審に思ったが、もっと大きなショックは2016年にやってきた。

RWEは株式ニュースで、2015年分の配当金をゼロにすると発表、大株主である地方自治体はRWEからではなく、ニュースでこの一大事を知らされることになった。

RWEは巨額の赤字にもかかわらず、2014年、50セントの配当金を払った。2015年は厳しい年だったので、自治体は配当金が減額されるとは予想していたが、まさかゼロになるとは予想していなかった。

もっともそのような楽観的な見方をしていたのは自治体だけで、アナリストは口を揃えて、

「RWEが配当金を削るのは時間の問題。」

と言っていた。自治体は厳しい現実から目を背けて、都合のいい夢を描いていたに過ぎない。

こうして地方自治体の2016年の予算に、ぽっかりと大穴が空く事になった。RWEのお膝元のエッセンだけでも、900万ユーロの予算(配当金)が欠けるという。

ただでも難民の世話で自治体の家計は火の車。配当金がなくなって、自治体は税金、料金を上げることを余儀なくされている。






    
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