
発展途上国という隠れ蓑の下で、先進国に変化しつつある中国。将来を左右する人工知能、5Gの分野では、アメリカと並ぶ先進国に成長した。
米国、中国遅れを取っているドイツが、政府主導で取り入れた将来戦略が インダストリ4.0だ。
無人運転は中国が世界トップ
日本、それに欧米では車にカメラーやセンサーを搭載して、運転手なしで車を運転するシステムを開発している。
しかし自動運転した車が引き起こした死亡事故が証明しているように、未だに大きな障害がある。中国では西欧とは異なる試みを行なっている。
道路や信号機、交通カメラ、そして市内で登録されている車まで、すべてセンサーを搭載して情報を交換している。
結果としてより正確な情報を集めることができ、人工頭脳が膨大なデータから状況を的確に分析することが可能になる。車が交差点にたどり着く前に、信号が赤になるか、それとも青で通りぬけることができるか、車に示される。
仮に車に搭載されているセンサーが赤信号を認知できなくても、車は情報を得ているので、事故を防ぐことができる。
交通のインフラは20世紀のままで、車だけをハイテクにして自動運転を可能にするのには限界がある。
交通インフラも21世紀に標準にあわせてデジタル化する中国の試みは、世界でも例がない。
その一方、ドイツ政府は"Industire 4,0"がドイツ産業の将来を左右するとして、啓蒙活動を行っている。
ドイツの将来戦略 インダストリ4.0
日本ではビックデータという言葉が、将来の企業戦略として頻繁に使用される。
ドイツでは
「全く聞かれない。」
というと誇張だが、「将来はこれで決まる。」というような扱いはされていない。勿論、無視されているわけではないが、
「それも欠かせませんね。」
程度の扱いだ。
正直なところ町工場が、どれだけビックデータの恩恵を受けるのか、疑問がある。
そもそもビックデータを利用するには、これを分析できる高機能のK.I.(人工頭脳)が欠かせないが、中小企業にはそんな予算も能力もない。
そしてドイツで多くの雇用を創設しているのは、KI を利用できる大企業ではなく、中小企業なのだ。
そこでドイツは、この中小企業が世界のライバルを相手に、生き延びれる戦略を考えだした。
それがインダストリ4.0だ。これは簡単に言えば、仕事の効率を上げることにある。
効率性の比較
日本では毎月、ガス、電気の使用量をわざわざ計測、
「先月の使用量は○○です。」
というお知らせが届く。そして支払いが済むと、お支払い明細まで届く。
ドイツでは契約初めにメーターを読み、1年後、あるいは数年後に契約を解約する日にメーターを読むだけだ。
さらにそのメーターの「読み」も自分でして、自分で電力会社に報告する。この数字を元に、1年間に消費された電気、ガス量を換算する。
それからこれまで支払った金額と比較して、払った以上に消費していれば費用を追加支払い、払った量より消費量が少ないと、お金が戻ってくる仕組みだ。
ドイツ式の利点は明らかだ。毎月、メーターを計測、使用明細や、引き下ろし明細を発行してすべての家屋に配っていると、この作業だけで膨大な作業量になり、これだけを行う社員を雇わなければならない。
効率の悪い日本式
日本中で数千人もの人間が、ドイツでは必要とされない仕事に従事している。
しかしいくら熱心にメーターを読んでも、会社の売り上げ上昇に繋がるものではない。電力会社、ガス会社の儲けは、電気&ガスの販売であがる。
こうした手間を省きドイツ式にすれば、膨大な仕事量が節約出来て、仕事の効率、すなわち社員一人で上げる収益率が上昇する。
お陰で国内総生産量を労働時間で割って仕事の効率性(生産性)を比較すると、日本人の仕事の生産性は、ドイツ人と比較して2割以上も低い。
ドイツの将来戦略 インダストリ4.0 とは?
以前は自宅にエンサイクロペディア、すなわち百科事典があった。
医者にかかって聞いた事がない病名を聞くと、この辞書を開いてその意味や解決方法を検索したものだ。
これが日本式の電気、ガス使用量の測定方式に当たる。ところが今や誰が百科事典を開くだろうか。百科事典さえない家庭がほとんどだ。
何故?それはウィキペデイアを始めとして、ネットで圧倒的に早く圧倒的に多い情報が収集できるからだ。
このように個人消費分野では、インターネットにより効率が大幅に改善された。しかし工場生産部門では、まだ大きな効率の上昇につながっていない。インダストリ4.0とは、まさにこの仕事の効率を上げるための手段である。
インダストリ 1.0
18世紀にイギリスで産業革命が始まる前まで、人類は中世と大きくかわらない生活をしていた。
製品の生産は手工業のため、まるで電気ガスメータを毎月読むように生産性が低く、生活のあらゆる部分で品物、製品が不足がしていた。
ところが産業革命が起きると、手工業から蒸気を利用した機械化に生産過程が以降、生産性が一気に向上した。
人類は始めて余剰に製品を生産する事が可能になり、市民の生活は飛躍的に向上した。これをインダストリ1.0と読んでいる。
インダストリ 2.0
インダストリ2.0 は蒸気から、電気による大量生産過程への移行を指す。
巨大な蒸気施設を必要とせず、コンセントひとつで巨大な生産機械を動かすことが可能なり、生産性が向上した。
インダストリ 3.0
インダストリ3.0 は70年代に始まった、コンピューター制御による自動化だ。
車の組み立てロボットなどがその典型で、生産過程のコンピューター化により、生産性が大きく向上した。
インダストリ 4.0
そしてその次にやってくるのがインダストリ4.0で、すべての生産工程がネット上で管理できるようになる。
これまでは工場で生産を開始しても、月末、あるいは四半期になって生産表があがってこないと、生産性について知ることができなかった。
この為、対策を取ろうにも時間がかかってしまい、改善するまで無駄に時間が過ぎてしまう。
ところがインダストリ4.0ではすべてがネットで繋がっているので、管理者は月末の報告を待つ必要なく、1時間ごとに生産管理ができる。
さらには在庫が少なくなると自動的に管理者にメッセージが届くので、「在庫切れで生産ラインが止まる。」という危険性も避けられる。
在庫管理者からの報告を待つまでもない。さらにプログラムが在庫を監視、在庫が少なくなると自動的に注文を出す。
今は在庫が減ると、倉庫から調達部に連絡が届き、注文を出す度に社員がPCの前に座って発注書を作成しているが、これがすべて自動化される。
ドイツの将来戦略 インダストリ4.0 で効率アップ!
こうして仕事の効率が上がり、人件費の高いドイツで生産しても、人件費の安い国の製品と世界市場で競争できる。
逆に仕事の効率を上げなければ、かっては「世界の工場」だったイギリスで生産業が消滅したように、ドイツでも生産業が消滅する危険がある。これを回避するための戦略がインダストリ4.0だ。
しかしインダストリ4.0は、「すべてが薔薇色」というわけではない。
すべてがネットで繋がっているので、外部からハッカーが侵入して、生産技術を盗んだり、生産過程を操作して止めてしまうことも可能になる。
これを防ぐには外部からの侵入を防ぐ手段、侵入されたらこれを早期に発見して必要な対策を打つ手段が必要だが、中小企業はまだ闇の中で手探りの状態だ。
これまでのインダストリ1.0、2,0、3.0がそうだったように、まずは大きな企業から導入化が進んでいる。
ドイツ政府は中小企業でも2025年までに、インダストリ4.0を新しいスタンダードにすることを目指している。日本のビックデータとドイツのインダストリ4.0、どっちが勝利するか、10年後のお楽しみだ。
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